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早川町赤沢 大阪屋

早川町赤沢は江戸時代より法華経信仰の聖地身延山久遠寺霊場七面山を結ぶ宿場町として栄えてきた。江戸時代初期に七面山の女人禁制が解かれると、中期頃には身延講などが盛んになり、七面山への参詣者も増加した。この際、七面山と身延山への参詣はセットで行われることが多く、赤沢はその道中にあることから講中宿場としてその役割を担っていくことになる。

 

大正から昭和にかけては身延線が開通したことで参詣客が急増し、赤沢宿は隆盛を極めた。最盛期には9軒の旅籠屋が存在したという。しかし、迂回道路の整備や交通の便が良くなったことで、昭和30年頃から赤沢宿を利用する参詣客は激減。今現在、講中宿として営業を続けているのは江戸屋旅館のみとなっている。

 

今回宿泊した大阪屋も元は講中宿であったが、参詣客の減少により2004年に休業。その後、伝統建築を生かした交流の場をということで白羽の矢が立ち、2016年よりゲストハウスとして営業を行っている。館内は照明やトイレなどが改修されている他、畳や家具も新調されているが、建物自体に大きく手は加えておらず、天保年間建築という主屋の雰囲気を存分に味わうことが出来る。なお、2階は明治時代に増築されたものである。

 

ゲストハウスなので食事の提供は基本的に行っていない。ただし、館内には炊事場がありそこで調理を行うことは可能。今回自分は食材と調味料を持ち込み自炊した。調理器具は一通り揃っており、大抵のものは作れると思う。また、調味料も塩や砂糖など基本的なものなら使わせて貰える。今回炊事場の写真を取り損ねたことが心残り。以下写真。

 

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大阪屋の外観。板葺屋根でトタン葺きとなっているのが特徴的。

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軒下には講中札が今もそのまま掛けられている。講中札とは参訪した客が宿泊した印に旅籠屋に残していく札のこと。

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旅館の入り口にある看板。江戸屋も同じような文字の色、字体となっていた。

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1階の広間。襖で仕切られており、基本的に食事はここで取る。1組1室が割り当てられ、場所は早い者勝ちで宿客が好きな場所を選ぶことができる。

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選んだ部屋。最奥にある部屋で、昔は一番良い場所とされていたとか。

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部屋からは手入れされた庭が見える。この部屋が一番良いとされた所以の1つだろう。

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2階の寝室。これは事前に部屋が割り当てられている。コロナの影響で布団は予め出して頂いたが、平時は自分で布団を敷くそう。エアコンがない代わりに扇風機が置かれていたが、標高が高いからかこの時期でも涼しく、結局使わなかった。

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2階からの風景。この集落は赤色のトタン屋根の建物が多く、木々の緑色によく映える。また、山が非常に近く圧倒される風景であった。

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2階寝室の入り縁側。軒裏には時代を感じさせる樋が付いている。

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2階の廊下。畳が平行に敷かれておりかなり広く感じる。

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1階の玄関。L字に2面とかなり長い。講で訪れる参詣客は人数が多いため、大勢がどこからでも出入りできるようにこのような造りとなっているのだそう。

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大阪屋の敷地内には資料館が併設されている。主に明治から昭和にかけて、実際に使われていた民具が展示されており、どれも大変貴重な品である。

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庭を眺めながら飲むビールは格別の味がした。

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山梨の地ワインも飲んだ。旅に出たらその土地の酒を飲まなければ。

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夕方、2階の寝室で雨音とヒグラシの鳴き声に耳を傾けながらお茶を飲む。至福の時間を過ごした。

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お風呂。湯は張らずシャワーで済ませたが、タイルがひんやりとしていて何とも心地よい。

 

オーナーさんには赤沢宿のことや建物のことなど、色々と教えて頂いた。そしてこのような状況の中訪れた訳だが、快く出迎えて頂いた上暖かな心遣いもあり、大変有難かった。また、平時は日本人より外国人客の方が多いとのこと。古民家を改装したようなゲストハウスは全国津々浦々結構あるが、元々宿としてこれほどの歴史を持っているところはそうないだろう。もっと日本の方にも知ってほしいと強く思う。

 

赤沢宿はゆるキャン△の7巻で志摩リンが訪れている場所で、街並みの他大阪屋の隣にある清水屋が描かれている。ここまでアニメ化されれば訪れる人も増えるのかなと思ったり。是非ともまた訪れたい場所だ。